テレワークは多様な働き方を実現する一方で、実際には「うまく運用できていない」「想定していなかったトラブルが起きている」という声も少なくありません。コミュニケーション不足や情報漏えいのリスク、人事評価の難しさなど、企業が直面する課題は多岐にわたります。
本記事では、テレワークでよく起こる5つの課題とその解決策をわかりやすく解説します。さらに、テレワーク導入の成功事例や、人材採用サービスの「Workship CAREER」も紹介。「テレワークの導入を検討している」「テレワークをもっと効果的に運用したい」と考える企業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
テレワークの現状と課題【総務省から引用】
本章では、総務省の統計をもとに、テレワークの現状と課題を紹介します。
テレワークの導入状況
テレワークの導入は2020年のコロナ禍を機に急増し、今では企業の半数以上で導入が進んでいます。導入形態としては「在宅勤務」が91.3%と圧倒的多数を占めており、次いで「モバイルワーク」が27.0%、「サテライトオフィス勤務」が12.9%となっています。(図参照)

参考:総務省|令和5年版 情報通信白書|テレワーク・オンライン会議
地域別では、首都圏や都市部でのテレワークの導入率が高く、地方都市圏では導入があまり進んでいない状況です。(※1)
企業規模別では、「従業員1,001人以上」の企業が最も多くテレワークを導入しており、企業規模が大きいほど導入率が高くなっています。さらに、雇用者のテレワークの実施頻度は「週2日」が多数を占めており、出勤とテレワークの両方を取り入れて働く「ハイブリット勤務」を導入している企業が多いです。(※2)
※1出典:国土交通省-テレワーカーの割合は下げ止まり傾向~令和6年度のテレワーク人口実態調査結果を公表します
※2出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構-実施率は10%~20%台。現状での課題はコミュニケーション面などが主 ――テレワークに関する各種調査の結果から
テレワークの課題
テレワークを実施している企業の約半数以上が、テレワークの導入課題に「セキュリティの確保(52.0%)」を挙げています。(図参照)

出典:総務省-51. テレワークの導入に当たり課題となった点(複数回答)
次いで、「必要な端末等の整備(50.3%)」「労働時間の管理(40.9%)」が課題として挙げられています。これらの結果から、テレワークではインフラ整備と労務管理への対応が必要なことがわかります。
テレワークでよく起こる5つの課題

以下の章からは、テレワークでよく起こる課題について詳しく解説します。
1.一部の業務しかテレワークを適用できない
テレワークはすべての業務に適しているわけではなく、業務内容によっては導入が難しい場合があります。以下の表では、テレワークに向いている業務・向いていない業務についてまとめました。
テレワークに向いている業務 | テレワークに向いていない業務 |
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業務によっては、作業フローの変更や、ツールを整備するための時間とコストが必要です。また、部門ごとにテレワークの可否が異なると、社内で不公平感が生まれるかもしれません。「いきなり全社的にすぐにテレワークを浸透させられない」「チームの連携に影響を与える可能性がある」点は、テレワークの課題といえます。
2.コミュニケーションが不足する
テキストコミュニケーションによるやり取りにより、誤解や作業の重複が発生しやすくなる点は、テレワークの課題です。実際、テレワークを導入している企業の7割以上が、導入後の課題に「社内コミュニケーションの減少」※を挙げています。
また会話の減少によって社員が孤独を感じ、メンタル面で不調をきたす可能性もあります。さらにオフィスで自然に感じられる一体感が薄れ、組織文化が共有されにくい点も、テレワークの課題です。
※出典:実施率は10%~20%台。現状での課題はコミュニケーション面などが主 ――テレワークに関する各種調査の結果から
3.情報漏えいのリスクがある
テレワークでは社員が社外で業務を行うため、機密情報や個人情報の漏えいリスクが高まります。さらに、社員へのセキュリティ教育の実施や、情報セキュリティ部門の設置など、対応すべき事項が多い点もテレワークの課題です。
安全なテレワーク基盤を構築するには時間とコストがかかるため、特に中小企業やリソースの限られた企業は負担を感じやすいといえます。
4.人事評価・育成・マネジメントが難しい
テレワークでは、社員の働きぶりを直接目で確認できないため、業務の進捗や成果の把握が難しくなります。その結果、適切な評価やフィードバックがしにくくなり、社員のモチベーション低下や成長機会の損失につながることがあります。
また労働時間や作業過程が見えにくいため、「誰が・どの程度努力しているか?」といった判断がしにくくなる点も課題です。さらに、テレワーク使用の評価制度や運営方法に調整しなければいけない点も、企業によっては負担に感じるでしょう。
5.テレワーク導入時に費用が発生する
テレワークを導入する際は、社員が自宅やサテライトオフィスでも快適に作業できるよう、環境を整える必要があります。もしPCやモニター、デスク、椅子などが揃っていない場合、「会社から貸し出しをする」「在宅勤務手当を支給する」といった対応が求められます。
また準備に伴って費用が発生するだけでなく、社員の作業環境に合わせた設定や教育、サポートへの時間も必要です。導入初期に、これらの負担が生じる点はテレワークのデメリットとなります。
テレワークの課題・デメリットを解決する7つの対策
テレワークにはいくつか課題があり、これらを放置すると業務効率の低下や社員のストレス増加につながる可能性があります。そこでこの章では、テレワークの課題・デメリットを解決する具体的な対策を紹介します。
▼関連記事:【企業向け】リモートワークでできる仕事とは?リモートワークの導入手順も解説
1.テレワークの目的を定める
テレワークを取り入れる際は、まず導入目的を明確にしましょう。導入目的は経営方針と連動させ、トップが明確に目的を示して社員から理解と協力を得ることが重要です。目的を整理したうえで、実施部門・対象者・対象業務などを含むテレワークの基本方針(テレワーク・ポリシー)を策定します。
また、テレワークの導入段階では、「すぐにテレワークを実施できる業務」「対策実施で可能になる業務」「現状では困難な業務」に分類して検討していきます。社内業務の分析によってテレワーク導入の目的と実行のロードマップがより明確になり、導入効果を最大化できます。
参考:テレワーク総合ポータル-日本型テレワークとは | 基本情報
2.業務の切り出しや対象者の選定を行う
テレワークは、業種や職種によって導入が難しい場合もありますが、個別業務によっては実施可能な場合があります。そのため従来の業務形態にとらわれず、仕事内容の本質を見直すことが重要です。業務分析では、たとえば以下の点をチェックしましょう。
- 業務にかかる時間
- 利用している文書(紙/電子、電子化の必要性)
- 使用システムのテレワーク対応・セキュリティ
- 個人情報の取扱い状況
- コミュニケーション頻度・人数・方法
導入にあたっては、労使で対象者や実施場所を十分に話し合い、業務方法を見直します。また、導入初期は効果検証や社内理解を得やすくするため、職種やライフステージを踏まえて対象者を選定するのが有効です。
対象者を選ぶ際は基準を設け、企業の目的とのバランスを確認します。実施は本人の意思を委ね、トライアルでは基準を示したうえで希望者を募る方法もおすすめです。
参考:厚生労働省-テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン (パンフレット) / テレワーク総合ポータル-テレワークの導入・運用ガイドブック
3.セキュリティ対策をする
テレワークでは、従業員がオフィス外で情報を扱うため、情報資産を保護するためのセキュリティ対策が必須です。安全に運用するには、以下のようにルール・技術・物理的な側面から総合的に対策します。
出典:テレワーク総合ポータル-テレワークの導入・運用ガイドブック
基本方針や行動指針をまとめたセキュリティガイドラインを策定し、ルール遵守を徹底します。加えて、アクセス管理や防犯対策など、技術的・物理的な対策を講じていきます。従業員への研修も行い、安全性と業務効率のバランスを意識しながら運用していきましょう。
また総務省では、中小企業等担当者向けのテレワークセキュリティの手引き(チェックリスト)を配布しています。以下リンクより、ダウンロードして活用してみましょう。
4.テレワーク向けの制度・ルールを作成する
テレワークの人事評価では、業務の成果や行動・態度を基準に設計することが重要です。評価制度はテレワークの有無にかかわらず平等に行える仕組みを整え、方法や期間を労働者に明示します。また、評価者向けの研修やガイドラインも提供しましょう。
さらに、社員が離れた場所で連携できるよう、「1on1ミーティングの実施」「チャットやタスク管理ツールの活用」「勉強会の開催」なども効果的です。情報共有と一体感を意識したコミュニケーション設計を意識していきましょう。
参考:厚生労働省-テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(パンフレット)
▼関連記事:テレワークに監視は必要?在宅勤務の適切な管理方法と注意点を解説
5.試行導入と効果検証を行う
テレワークを本格導入する前に、まず試行導入を行い、その効果を検証することが重要です。効果検証では、以下のように定量評価と定性評価の両面から分析します。
定量評価項目 | 定性評価項目 |
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出典:テレワーク総合ポータル-日本型テレワークとは | 基本情報
定量評価では、業務効率や残業時間など、数値で測定可能な項目を確認します。定性評価では、社員の満足度や働きやすさなど、数値化が難しい側面をアンケートやヒアリングで把握します。両者を組み合わせることで、テレワーク導入の成果や改善点を多角的な評価が可能です。テレワークを本格的に導入する前に、実行と検証で拡大範囲を決めていきましょう。
6.メンタルヘルスの対策をする
テレワーク下のメンタルヘルス対策では、以下のような方法をとりましょう。
予防段階 | 対策内容 |
一次予防 (未然防止) |
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二次予防 (早期発見・早期対応) |
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三次予防 (休職・復職支援) |
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視覚情報が得られにくいテレワーク環境では、データやツールを活用して「見えない不調」を早期に察知することが重要です。
加えてテレワークでは、オフィス以外の作業環境の安全管理も欠かせません。事業者は、労働衛生管理のガイドラインを参考に、労働者に対して教育・助言を行い、作業環境の状況を把握・改善することが求められます。
具体的には、「チェックリストを活用して自宅での作業環境を確認する」「サテライトオフィスなど自宅以外の場所の活用を検討する」といったことが推奨されています。
参考:一般社団法人 日本テレワーク協会-テレワーク導入ガイドライン
7.補助金を活用する
テレワーク導入や拡充にかかる費用を軽減するため、国や自治体が提供する補助金・助成金を活用するのもおすすめです。たとえば人材確保等支援助成金(テレワークコース)では、適切な労務管理下におけるテレワークの導入・実施により、労働者の人材確保や雇用管理改善で効果をあげた場合に助成してもらえる制度です。
補助金や助成金には、対象条件や申請期限が設定されているため、制度内容を事前に確認して準備することが重要です。また、支援制度の内容は年度ごとに更新される場合があるため、最新情報を随時チェックしておきましょう。
▼関連記事:採用・雇用に関する助成金とは?業務委託から正社員登用で使える助成金についても解説
デメリットだけじゃない!テレワークのメリット
テレワークには確かにいくらか課題が存在するものの、対策を講じて運用すると、企業・従業員双方に大きなメリットをもたらします。具体的には、以下のようなメリットがあります。
メリット | 詳細 |
全国各地から人材を確保できる | 地理的制約がなくなることで、優秀な人材の採用幅が広がる |
オフィスコストの削減が可能 | 出社人数が減ることで、オフィス面積や光熱費などのコストを抑えられる |
緊急時でも事業継続が可能 | 災害や感染症流行時でも、業務を止めずに継続できる |
業務プロセスの改善につながる | 文書や作業のデジタル化・オンライン化を進めることで、業務効率が向上する |
企業イメージの向上 | 働き方改革や柔軟な勤務制度を導入することで、社会的評価が高まる |
従業員のワークライフバランス改善 | 通勤時間削減や柔軟な勤務体制の導入により、生活の質や満足度が向上する |
上記のように、テレワークは企業の成長や従業員の働きやすさにつながる取り組みになります。
▼関連記事:リモートワークを導入するメリット・デメリットとは?効果を高めるコツや企業の事例も紹介
テレワークの課題を乗り越えた企業の事例
株式会社プログレスは創業当初から「フルリモート×フルフレックス」を導入し、社員がオンラインで連携して業務を進めています。テレワークの導入により、生産性向上、育休復職率100%、退職率低下などの成果を達成。リモート環境でもチームの一体感と働きがいを維持し、平等感と心理的安全性を重視する文化が組織力向上につながっています。
項目 | 内容 |
導入目的 | 「日本一のリモート開発会社になる」ことを目指し、全国どこからでも優秀なエンジニアを採用・活用できる体制を整備 |
実施施策 |
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成果 |
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出典: テレワーク月間-フルリモート勤務でも社員が同じ方向を向いて働くために。テレワークの強み・弱みを見極め、柔軟に改善を続ける。
テレワークの採用でよく起こる課題
テレワークの普及に伴い、オンライン上での業務に慣れた人材を採用する企業が増えてきています。ただしその場合、以下のような課題が出てきやすいです。
1. 応募者のスキルや適性の見極めが難しい 2. 会社の文化や雰囲気を伝えにくい 3. 採用の母集団が限定される場合がある 4. 採用プロセスの管理が難しい 5. 入社後の定着・活躍の不安 |
これらの課題を放置すると、採用に時間やコストがかかるだけでなく、入社後にミスマッチが起きるリスクも高まります。そのため、テレワークに適した採用手法や仕組みを整えることが重要です。
具体的には、オンライン面接やスキルチェックツールの活用、企業の文化・働き方を伝える採用広報の工夫が求められます。また、テレワークに対応した即戦力人材を効率的に採用できる、専門のマッチングサービスや人材プラットフォームの活用もおすすめです。特に『Workship CAREER(ワークシップキャリア)』は、企業のさまざまなニーズにお応えするサービスです。
テレワークの採用課題を解決する『Workship CAREER』の3つの特徴
ここでは、テレワークの採用課題を解決する『Workship CAREER』の特徴について紹介します。
1.「テレワーク可能」「副業OK」など、多様な働き方を提示できる
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2.業務委託からの正社員登用で採用のミスマッチを減らせる
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▼関連記事:【企業向け】フリーランスと正社員の違いとは?両者のメリットや注意点など徹底解説
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テレワークの導入には、業務の切り出しやコミュニケーションの工夫、セキュリティ対策、など、さまざまな課題があります。しかしこれらの課題を整理して対策を講じると、テレワークは企業の生産性向上や人材確保に大きなメリットをもたらします。
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