副業先の企業に転職する「副業転職」。即戦力を採用しやすい方法として企業側にもメリットが広まりつつあり、適切なかたちで進めれば、経済的リスクやミスマッチの可能性を抑えながらキャリアチェンジに挑戦できます。
一方で、副業転職を考えていても、実際にうまくいくのか不安な人も多いかもしれません。副業転職のチャンスを活かすためには、採用側の視点や、入社後に起こりがちなミスマッチなどについて理解を深め、適切に準備を進めることが重要です。
本記事では、副業転職が注目されている背景や副業転職のメリット、成功させるためのポイントを解説します。
若手を中心に広まる「副業転職」
副業転職とは、「副業を行っている人が、副業先の企業に転職すること」を指します。
パーソル総合研究所の調査(2025年)によると、副業経験者約5,000人のうち、副業先の企業へ転職した経験が「ある」と答えた人は6.7%でした。割合は若い世代ほど高く、20代では13.6%に上ります。

出典:パーソル総合研究所
また、副業人材を受け入れている企業に対する「副業人材が自社に転職してきたことがあるか」という質問では、半数を超える55.6%が「ある」と回答しています。

出典:パーソル総合研究所
副業転職はすでに少なくない割合で行われており、採用側にとっても珍しくない選択肢になりつつあることがわかります。
なぜ今「副業転職」が注目されているのか
副業転職が注目される背景には、働き手・雇い手両方の事情が関係しています。
副業人口の母数が増えている
総務省の就業構造基本調査(2022年)によれば、非農林業従事者のうち副業があると回答した人は305万人で、5年前(2017年)より約60万人増加しています。
副業をする人の母数が大きくなるにつれて、副業先の企業に転職するケースも自然と増えていると考えられます。
本業だけでは満たせない成長欲求
先のパーソル総合研究所の調査では、副業転職者のキャリアに対する考え方として「昇進・昇格し、高い役職に就くこと」や「新しい環境や役割に挑戦し続けること」といった、上昇・挑戦志向が際立って高い傾向にあります。
逆に「仕事と生活の調和」や「1つの組織で、長く安心して働き続けること」などの安定志向は低いという結果が出ています。
現状維持よりも、新しい挑戦をしてキャリアを高めたいという考えから副業を始め、そのまま転職する人が多いことが見てとれます。
副業が採用チャネル化している
少子高齢化により各業界で人材不足が続くなか、多くの企業が優秀な人材を集めるために、採用手段を多様化しています。
とくにエンジニアなどの専門的な職種では、企業も「入社後のミスマッチを避けたい」という意向が強く、実務を通じてお互いの相性を確認できる副業を、採用の入り口として活用するケースが増えています。
副業転職、求職者側のメリット
選考に先立って一部の業務に参画できる副業転職では、採用側だけでなく、求職者側にも大きなメリットがあります。
入社前に「仕事のリアル」がわかる
求人票や面接で見えにくい企業の内情が見えるため、入社後のギャップが生じにくくなります。意思決定のスピード感、チームのコミュニケーション量など、求人票だけではわかりづらい情報を体感でき、ミスマッチを未然に防げるのは大きな魅力です。
先のパーソル総合研究所の調査でも、副業転職者の「はたらく幸せ実感(はたらくことを通じて幸せを感じている)」と「ワーク・エンゲイジメント」は、通常転職者のスコアを大きく上回っており、期待と現実のギャップが少ないことがうかがえます。
実績がある状態で転職交渉できる
副業で成果を出したうえで転職に臨めるため、未経験や書類上のスキルのみを根拠にした応募よりも内定が出やすい可能性があります。「この人は現場で通用することが証明されている」という状態での入社は、採用担当にとっても大きな安心材料です。
実際の業務を一定程度把握したうえで選考を受けられるため、入社前の業務内容のすり合わせも円滑に進めやすくなります。
収入を維持しながら転職を考えられる
いきなり退職するのではなく、本業による収入を保ちながら副業を続け、新しい企業・業界との相性を確認できます。
転職は、必ずしも条件面やキャリア志向の面で良い方向に働くとは限りません。経済的なリスクを抑えつつ、ほかの仕事を試してじっくりと意思決定できるのは、副業転職の大きな魅力です。
副業転職のデメリット・リスク
副業転職はメリットが多い一方、事前に知っておきたいリスクもいくつかあります。
相性よく見えても、想定外のギャップがあることも
副業(業務委託)では、特定のプロジェクトや業務のみを担当するケースが一般的です。一方で、正社員になると全社業務が追加で振られることも多く、ポジションによっては、評価責任やマネジメント負荷などが加わることがあります。
また、社内の人間関係や企業文化にも深く関わることになるため、副業中に「相性がよい」と感じても、正社員になってから想定外のギャップが現れることは珍しくありません。
このギャップを最小限に抑えるためには、正社員ならではの業務内容や条件についても、具体的に確認しておくことが重要です。また、応募の前に転職エージェントに相談して、第三者視点から意見をもらうのもよいでしょう。
副業期間は過重労働になりやすい
本業と副業の両立は、スケジュールや体力の面で負荷が大きくなりがちです。パーソル総合研究所の「副業の実態・意識に関する定量調査」(2025年)によれば、副業によって「仕事に支障」「体調不良」を経験した人は26.9%。また、本業残業と副業の稼働時間の合計が、月45時間超の人が3割超というデータが出ています。
この対策として、副業先との契約時に週あたりの稼働上限を明記しておくのが有効です。「週10時間まで」など数字で合意しておくことで、後からのオーバーワークを防ぎやすくなります。
現職とのトラブルに注意する必要がある
厚生労働省のQ&Aによれば、「労務提供上の支障がある場合や競業により自社の利益が害される場合などは、企業が副業を禁止・制限できる」とされています。
そのため、副業を始めるにあたっては、現職に必要な許可や相談を行い、トラブルのないように進めることが欠かせません。また、在職中は副業によってパフォーマンスを落とさないための体調管理・時間管理も重要です。
副業転職を成功させるポイント
副業転職は、適切に進めることでキャリアチェンジの有効な手段になります。ここでは、成功確率を高めるために意識したいポイントを紹介します。
副業からの採用が活発な企業を選ぶ
これから副業先を選ぶのであれば、副業からの正社員採用に積極的な企業を選ぶのが近道です。
副業と転職の両方に強いエージェントに相談し、副業転職の実績がある企業や、業務委託から正社員転換の実績が豊富な企業について、情報を集めるのもよいでしょう。
副業で高いパフォーマンスを発揮する
副業中に成果を出せば「正社員として迎え入れたい」という企業側の意欲が高まります。
与えられた業務に加え、課題発見や改善提案など積極的な関与を示すことで、「いち外部パートナーを超えた役割も果たしてくれそう」という期待値を高めることにもつながります。
Workship MAGAZINEで発表された調査(2025年)によれば、トランジション採用(フリーランス・業務委託からの採用)の検討対象となる人材の特長に関して、企業から最も上がった回答は「専門性やスキルが非常に高い」(55.0%)という実務能力に関する項目でした。
これに続き「周囲と積極的にコミュニケーションを取っている」(48.3%)、「企業文化やチームへの理解度が高い」(45.0%)といったソフトスキル面の項目も上位にあり、副業の時点から組織への適応性を示すのも重要といえます。

面談以外にも会社と接点を増やす
企業理解を深めるためには、副業先の社員との接点を増やすことが有効です。定例会への参加や他部署メンバーとの雑談など、業務以外でも意識的にコミュニケーションをとっていくとよいでしょう。ミスマッチの予防になるのはもちろん、「一緒に働きたい」と思ってもらうきっかけにもなります。
正社員化の前に段階的な移行も検討する
副業転職は一足飛びである必要はなく、稼働時間や担当業務の範囲を徐々に広げながら関係を深める方針もあります。焦らず段階的に関係を構築することで、十分に相性を確かめたうえで転職に踏み切りやすくなります。
また、入社の意向は示しつつ、「現職で一区切りがつくまで」と話して、転職のタイミングを調整することで、「責任感を持って仕事をやり遂げる人だ」という印象を先方に与えることにもつながります。
副業転職の面接で聞かれやすい質問
副業先への転職では、書類選考など一部のプロセスが割愛される場合もありますが、面接は行われるのが一般的です。
副業転職ならではの質問に備えることで、合格の可能性を高められます。
副業から正社員を希望する理由は?
「業務委託と正社員の違いをどう考えているか」を問われる質問で、「なぜ独立ではなく転職を選んだのか」という背景も含めて聞かれます。
「安定が欲しいから」という消極的な理由だけでは評価が下がりやすいため、「より深く事業にコミットしたい」「責任範囲を広げたい」という前向きな志向を伝えることが重要です。組織の中で働くことの意義を、自分自身の価値観と結びつけて語れると説得力が増します。
副業を通じて見えた会社への見解は?
内情をある程度把握したうえで、どのように会社に貢献しようと考えているかを問う質問です。
「外から見た客観的な視点」と「内側から得た当事者の視点」を組み合わせて語れると、通常の転職者との差別化ができます。
課題を指摘する場合は批判ではなく「こう改善できると考えています」という建設的なかたちで伝えることで、問題解決への主体性もアピールできます。
副業転職の不安・懸念はあるか?
「正社員になったら、副業時と比べて業務範囲や役割が広がりますが大丈夫ですか?」「副業時と違って、社内会議・評価制度・人間関係が増えますが、どう向き合いますか?」など、「副業時の働き方と正社員化後の働き方の違い」を整理できているかどうかは問われやすいでしょう。
ここでは、すでに社内のカルチャーをある程度知ったうえで、雇用形態の違いによる役割の変化を、どこまで現実的に受け止められるかを確認されます。
対策としては、副業から正社員になった人がよく感じる悩みなどを事前に把握し、自分なりの解決案を示すことで、採用担当へ安心感を与えやすくなります。
さらに、副業・フリーランス人材の転職に詳しいキャリアアドバイザーに相談し、「採用担当がどんな点を懸念するのか」を理解しておくのもおすすめです。
プロの伴走で、副業転職を賢く進めよう
副業先への転職は、経済的なリスクを抑えながら希望の会社へのキャリアチェンジに挑戦できる、有効な選択肢の一つです。
副業転職は、通常の転職に比べて多くの点で有利に働きやすい一方で、特有の注意点もあります。業務委託人材のキャリアに詳しい転職エージェントに相談し、ほかの求職者の事例なども聞きながら、選考の準備を進めるのがおすすめです。
また、副業をまだ始めていない段階でも、副業・フリーランスのキャリアに詳しい転職のプロに相談しながら方向性を考えてみることで、より納得のいく意思決定につながるでしょう。
フリーランスや副業のキャリアからの転職を検討している方には、『Workship CAREER』がおすすめです。副業・フリーランスのキャリアに精通したキャリアアドバイザーへの相談が無料で行えるほか、副業転職をはじめとするさまざまなキャリア形成に向けて具体的なアドバイスを受けられます。
業務委託・フリーランスからの転職をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
大阪大学法学部卒。行政の教育事業支援、広告業界での人事職を経て2025年よりフリーランスライターに。ITやSaaS分野を中心に、採用広報記事や技術コラム、セミナーレポートなど幅広く記事制作に携わる。執筆・編集実績は約200本。