職務経歴書を前にして、「自分には人に誇れるような特別な強みなんてないな...」と手が止まってしまった経験はありませんか?
多くの人は、苦労して身につけたスキルや、目に見える華やかな実績こそが強みだと考えがちです。しかし、自分にとってはできて当たり前の業務にこそ、「本来の強み」が隠れているとしたらどうでしょうか。
キャリアコーチの牧園さんによれば、本来の強みとは「暑くなったら汗をかく」のと同じくらい、本人にとっては自然にできてしまうことなのだそう。しかし、「誰もが強みを持っているにもかかわらず、それがちゃんと引き出されていない。」と語ります。
本連載では、自分の強みを活かせる転職を実現するためのヒントを、キャリアコーチの牧園和修さんに全3回にわたってお聞きします。第1回となる本記事では、「本来の強みとは何か」「どうすればそれに気づくことができるのか」について、詳しくお話を伺いました。
| 牧園 和修(まきぞの かずのぶ) キャリアコーチ 大学時代に学生向け就活支援団体を設立。新卒で入社した大手通信会社では、SEや新規事業開発に携わる傍ら、リクルーターとして7年間採用に従事。その後、人事サービス会社にて事業部長を務め、約10年間にわたり毎年200〜300名の書類選考や面接を担当した。 現在は、豊富な採用実務とマネジメント経験を活かし、キャリアコーチとして活動。一人ひとりの「強み・価値観・可能性」を言語化し、心から納得感を持てるキャリア設計を伴走支援している。 |
あなたの強みは、無意識のうちにやっていること
—これまで採用活動に関わってこられたなかで、応募者の方々についてどのようなことを感じていましたか。
みなさん、魅力的な強みをお持ちなのに、それが十分に伝わっていないケースが多くて。ずっと「もったいないな」と感じてきました。たとえば、企業が求職者に内定を出す判定ラインが、10点満点中7〜8点だとしましょう。もちろんばらつきはありますが、体感としておよそ50%くらいの方が、5〜7点。僕がもったいないと感じるのは、この50%の方々です。
この50%の方々に共通しているのが、「強み」を聞かれると、「仕事で自分が成し遂げた成果」を中心に話してくださることなんです。でも、「その人ならではの魅力」というのは成果の背景にあって、それこそが本当に伝えるべきことだと思います。
選考のなかで実際に、「そのときどのようなことを考えて、どのように行動していたんですか」と問いかけると、回答のなかにその人ならではの価値観や思考プロセスが見えてきます。こうしたやりとりのなかでご自身の「強み」に気がついていくと、最初は「もったいないな...」と感じた方でも、最終的には内定の合格ラインに到達できるんです。
—なぜ自分の強みに気づけない人が多いのでしょうか。
本来持っている強みというのは「当たり前にやっていること」で、自分では意識しにくいからです。
実際、相談者の方のお話を伺っていると、私からすれば「それは本当にすごいことですよ!」と驚くようなことがよくあります。しかし、ご本人にとっては当たり前のことなので、その価値に気づいていらっしゃらないんです。
ー他の人が驚くような長所に、本人が気づいていないことがあるんですね。
そうなんですよ。たとえば、暑くなったら汗をかくと思いますが、意識して汗をかく人はいないですよね。これと同じで、一人ひとりが本来持っている強みというのは、普段、無意識のうちにやっていることに隠れているんです。
もちろん、努力して身につけたスキルや、苦手を克服して得た経験も大切です。ただ、それとは別に、本人が無意識のうちに自然と繰り返している行動のなかに、その人らしい強みが隠れていることが多いんです。

自分の強みを見つけるヒントは、「感情が動いた瞬間」
—隠れた強みに気づくためのヒントはありますか。
仕事や生活の中で「この人なんでこれ、できひんねやろ?」と思うことに、意識を向けてみてください。そこにヒントがあります。
たとえば、誰かのプレゼンを見ているときに、「そんな話し方やったら、聞いている人にも伝わらないのでは?」と違和感を覚えたとしましょう。そう思うのは、その人が無意識のうちに、人の心を掴むようなプレゼンができてしまうからです。自分にとって当たり前のことほど、それができていない他人の振る舞いが気になってしまうものなんですよね。
なので、まずは日常生活のなかで、モヤっとしたときに立ち止まってみてください。ここでいう「モヤっと」とは、喜怒哀楽の感情が動いた瞬間です。その背景には、必ずあなたの「価値観」が隠れています。「その感情が、どのような価値観から出ているのかな」と振り返ってみると、本来の強みが浮かび上がってくるはずです。そうやって自分を客観的に分析し始めると、たとえ怒っているときでも、新しい発見があって少し楽しくなりますよ(笑)
本来の強みに気づき、スカウトが激増した
—自分では当たり前だと思っていることが本来の強みだった、という具体的な事例を教えてください。
プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)を目指して転職活動をされていた方の例が印象に残っていますね。PMMというのは、プロダクトやサービスの価値を言語化し、市場で勝つための戦略を練る職種です。
職務経歴書を拝見すると、強みとして「セミナーを何百回実施した経験があります」と書かれていました。一見すると「出席を取って、来場者を案内するような運営業務をしていたのだろうか?」とも捉えられる内容です。
しかし、詳しくお話を伺うと、その実態は全く異なっていました。
その方は、クライアントの事業の強みを言語化し、競合調査によって差異を明確にした上で、「どうすれば市場に刺さるか」という戦略の結晶化まで担っていた。さらに、そのような戦略設計を複数企業に対して行っていたんです。
僕は、その方の本来の強みが引き出されていないことに「もったいない」と思って、「あなたの強みは“事業戦略を立てられること”そのものですよ」とお伝えしました。本人にとっては“汗をかくように当たり前”のことだったので、「そんな大したことなんですか?」と驚いていましたが。
—強みを捉え直したことで、転職活動にはどのような変化が起きたのでしょうか。
その方はまず、強みを「マーケティング戦略の立案ができる」と定義した上で、志望業界で用いられている言葉や表現で、職務経歴書を書き換えました。その業界で使われている言葉が並んでいるほうが、採用担当者にとって読みやすく、響きやすいですからね。
そうして一新した職務経歴書を公開した瞬間、スカウトオファーは激増しました。本人も驚くほどの反応で、念願だったPMMのポジションからも次々と声がかかるようになったんです。
そこからわずか1ヶ月後には、納得のいく転職先が決まりました。現在は、本来の強みを存分に発揮しながら、いきいきと働かれていますよ。
「もったいない」をなくしたい—キャリア支援の原動力

—牧園さんがキャリア支援に向き合う際、その根底にある信念や大切にされている想いをお聞かせください。
根底にあるのは、今日も何度もお伝えしてきた「もったいない」という想いです。その方の本来の強みが十分に発揮されていない状態に対する、この「もったいない」を解消し、その人が持つ可能性を最大化させたいという思いが、今の私の大きな原動力になっています。
そのためには、対話を重ね、相談者のこれまでの経験を丁寧に紐解いていきます。単に「何をしたか」だけでなく、どのような価値観で行動し、どう考えたのかという「思考プロセス」まで引き出し、「あなたの本来の強みはここにあるのではないですか?」という問いを投げかけていきます。
ともに対話を重ねるなかで、一生大事にできるような本来の強みに気づいたとき、相談者の方の表情がとても明るくなるんです。それが何よりも嬉しいですね。
リモートワーク・ハイブリッド勤務に特化した人材紹介エージェント「Workship CAREER」の編集部です。採用に役立つ情報を発信していきます。